3月13日の朝、メッセンジャーは通知があった事を知らせていた。
「緊急でお話したい事があります」
それは、3月号で特集するいちご農家さんからのものだった。
3月12日深夜、筑後地区で発生した竜巻によって三連棟のハウスの内、一棟が損壊。
手塩にかけて育てたいちごのうち三分の一を廃棄せざるを得なくなった。
ふくおか食べる通信読者への発送を1週間後に控えての大惨事に私は耳を疑った。


かろうじて残った三分の二のいちごも生育に不安要素が残るなど予断を許さない中、
私が 最も心配したのが、農家さんの精神状態であった。
いちごの出荷を「箱入り娘の嫁入り」というくらい、自らが育てたいちごを愛している
農家さんにとってこの災害は大変ショッキングな出来事である。
事実、奥様はあまりのショックに1日寝込んだほど。
ところが、農家さんを後押ししたのは、読者さんからの応援の声だった。
読者コミュニティに投稿される応援メッセージは、農家さんにとってのビタミン剤となり
徐々に農家さんの顔にも笑みがこぼれるほどになってきた。
発送作業は、天候といちごの生育状況、そして農家さんの気力、体力を勘案しながらの
ものとなった為、一日の発送量が「その日にならなければわからない」という状況で行われた。
読者さんにとっては、いつ自分の所に届くかわからないのである。
そんな不便な状況にも関わらず、一人として不満を口にする読者さんはいなかった。
むしろ、率先して「自分は後回しで構わない」という声が多かった事に驚いた。
一体、何が起こったのか?
必死のパッチで発送作業とその段取りに神経を集中させていた私に、
ある読者さんからのメッセージが心に響いた。
「今まさに、食べる通信の意義が発揮されようとしていますね」。
ハッとさせられた。
そして、何よりの励みの言葉となったのは言うまでもない。
食べ物付き情報誌というサービスを提供する事が目的ではなく、それはあくまでも、
農家さんと読者さんが顔の見える関係性、お互いを尊重する関係性、お互い助け合う関係性
になる手段であることを身を以て体験したのである。
最終的に読者コミュニティに投稿された応援メッセージはのべ200件を超え
過去最多となった。
全てのメッセージを印刷して、農家さんに手渡し読んでもらった。
一件、一件噛みしめるように目を通し「ありがたかですねー」と何度も何度もつぶやく
農家さんの姿に、改めて、何の為にこれをやっているのかを再確認できた春の出来事だった。
