
2025年1月15日 0039:「世界で最初に飢えるのは日本?」
約2年前のことでした。特に目的もなく書店を歩き回っていると、ある一冊の新書が目に飛び込んできました。タイトルは「世界で最初に飢えるのは日本」。その挑発的な言葉と、講談社の黄色い表紙は、否応なく視線を引きつけました。
手に取って目次をざっと追いましたが、「これはただ危機感を煽るだけの本だ」と、その時はそう思い、本を元の場所に戻しました。ウクライナ戦争の影響で小麦価格が上昇しつつあった時期でしたが、タイトルにある「飢える」という表現は、売り上げを狙った誇張に思えました。
それから時が流れ、2025年1月、さつまいもの特集を組む中でその歴史を調べていた時、ふとあの本のことが頭をよぎりました。さつまいもは「救荒作物」として、江戸時代の飢饉や戦後の食糧難で日本人の命を支えてきた作物でした。そして驚いたことに、現在でもそのさつまいもを政策的に再評価しようという動きが進んでいました。
2024年、「食料供給困難事態対策法」が成立したのです。その内容は、異常気象や国際情勢の悪化による輸入途絶といった不測の事態に備え、熱効率の高い作物(主にいも類)への生産転換を進めるという内容が記されていました。
改めて日本の食料事情を調べてみると、その脆弱さに愕然とします。2024年のカロリーベースの食料自給率は38%。先進国の中では最低の水準です。アメリカは104%、フランスは121%、ドイツ83%、カナダ204%、オーストラリアに至っては223%と、いずれも日本をはるかに上回ります。一見低いと言われるイギリスやイタリアでさえも55%以上を確保しているのです。(2021年農水省調べ)
さらに、日本の農業は飼料や肥料の多くを輸入に頼っていて、これらを全て国内で賄うとした場合の自給率は、驚くべきことに10%を下回るという試算もあるのです。
そして、今、2025年。アメリカではトランプ氏が再び大統領の座に返り咲きました。不測の事態が起こるのでしょうか? 私にはわかりません。我々は、本当に3食いもの生活に耐えられるのでしょうか? それもわかりません。
ひとつ確かなのは、日本の食料自給体制が極めて脆弱であるという事実です。農家の平均年齢は68歳。中央値は70代です。あと10年もすれば農家の数は大幅に減少し、作物を育てる人自体がいなくなってしまうでしょう。不測の事態が起こらずとも、我々が飢える可能性は着実に高まっていると言えます。
この現実に、私たちはどう向き合うべきでしょうか。一人ひとりが「自分ごと」として最優先に考える時代が訪れているのかもしれません。