コメの価格が高止まりしています。2025年5月19日のNHKニュースによれば、全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は5キロあたり税込4,268円。前年同時期と比べて102.5%の上昇です。概ね1年前の2倍の価格で推移しています。
なぜ、このような事態になっているのでしょうか。様々な憶測が飛び交っていますが、基本的に、価格は「供給」と「需要」のバランスで決まります。「供給>需要」であれば下がるし、その逆の「供給<需要」であれば上がります。それは古今東西、変わらない市場の原理です。
実際に、コメの生産量を見ると、2019年は約776万トン、2024年は約735万トン。5年間で5.4%の減少です。一方、消費量も714万トンから702万トンへと1.6%減っています。この数値だけを見ると、生産・消費とも微減で、(生産の減少率が若干高いものの)価格が2倍になるような極端な需給ギャップは見当たりません。
では、なぜ?
ヒントは「作り手の数」にあります。農業の現場を支えている「基幹的農業従事者」は、2019年の約136万人から2024年には116万人にまで減少しました。わずか5年で14.6%も減った計算です。しかも、現役農家の約6割が70歳以上。60歳以上まで加えると約8割という、極端な高齢化が進んでいます。
これは一体何を意味するのでしょうか? このペースで行くと、おそらく10年後には農家の数は60〜70万人ほどとなるでしょう。この人数で現在のコメの生産量を確保するには農業従事者1人あたりの生産性を最低2倍にしなければなりません。
果たしてそれが可能なのでしょうか? 農地の集約化、作業の自動化、大規模な投資。そして、気候変動による自然災害への備え……。どれも一筋縄ではいきません。つまり、今後ますます「供給不足」が現実化していく可能性があるのです。
10年後、あなたやあなたの家族は何歳になっていますか? その時も今と同じように、国産の安全なコメを、手頃な価格で食べ続けられると思いますか?
「国産が無理なら輸入すればいい」——そんな考えも通用しにくくなっています。世界の人口は増え、気候変動が激化し、国際紛争も続く中で、食料の輸入そのものが難しくなってきているのです。たとえ輸入できたとしても、価格は跳ね上がるでしょう。
当たり前だった「食の安心」が、当たり前ではなくなる時代。
この「令和のコメ騒動」は、私たちがそれに気づくための、ひとつの警鐘なのかもしれません。
(数値の出典は農林水産省統計情報)