2025年のあすか会議で、忘れられない瞬間がありました。

あすか会議とは、全国から1,000人以上が集まるグロービス経営大学院最大級のカンファレンスです。経営を学び、人と出会い、志を磨く。そんな熱気に包まれた会場で、1人のAI専門家がこんなことを言いました。
「知的専門性の優位性は、もうなくなりました。」
会場が静まり返りました。

2023年、生成AIが世の中を騒がせ始めた頃、「いずれ知的専門性だけでは戦えなくなる」と、その専門家は言いました。でも、その予測が、わずか2年で「もう終わった」と言い切られるとは。このスピード感には、正直、背筋が寒くなりました。
では、僕たちはこれから何を磨けばいいのでしょうか。
知的専門性はいらない、という話ではありません。むしろ必要です。ただ、それを何のために使うのか。その問いが、これまで以上に重くなったのだと思います。
実は、この問いに対する僕なりの答えは、もう出ています。
それは、「好き」にフルベットすること。つまり、好きなことをなりわいにすることです。
あるパネリストは、それを「オタク力」と表現しました。思わず膝を打ちました。好きだから調べる。好きだから試す。好きだから時間を忘れる。そんな熱量は効率では測れません。そして、その熱量こそが、AIには真似できない人間らしさなのかもしれません。
とはいえ、現実はそう簡単ではありません。収入はどうする。家族は納得してくれるのか。そんな不安もあります。
でも、それ以前に厄介なのは、「自分は何が好きなのか」が分からない人が意外と多いことです。かくいう僕も、その1人でした。
そんな中、ひとつだけ、あすか会議にヒントがありました。
「これから私たちは何をすべきでしょう?」というモデレーターの問いに、1人の若い天才肌のパネリストが、真顔でこう答えたのです。
「狩猟です」。

会場からは失笑が漏れました。でも、彼は一切笑いませんでした。さらに彼は、今もっとも夢中になっていることは「酒づくり」だと言います。その瞬間、僕は腑に落ちました。
彼の言葉を僕なりに解釈するなら「身体性を伴った”生きる”を体感できる体験」が重要なのだと。
便利になればなるほど、僕たちは頭だけで生きるようになります。画面の中で考え、画面の中で働き、画面の中で人とつながる。でも、人間は本来、土に触れ、火を起こし、食べ物をつくり、自然と向き合いながら生きてきた生き物です。

AIが知性を代替する時代だからこそ、人間にしか味わえない身体性や感覚が、逆に価値を持ち始める。そんな予感がしました。
そして迎えた今年のあすか会議。
昨年、「知的専門性の優位性はなくなる」と語ったあのAI専門家は、さらに強い言葉で僕たちに呼びかけました。
「GO WILD!!」
野生を取り戻せ。知識だけではなく身体で生きろ。そんなメッセージに聞こえました。

「好きなことをなりわいにする。」簡単ではありません。だからこそ、考える価値のある問いなのだと思います。自分は何に心が動くのか。どんな時間なら夢中になれるのか。それをどう仕事につなげていくのか。
答えは1人で見つけるものではなく、人との対話の中で少しずつ輪郭を帯びてくるのかもしれません。そんな問いを、肩書きも年齢も関係なく、みんなで語り合える場をつくれたら面白い。最近、そんなことを本気で考えています。





