みなさんは「歴史」好きですか? 僕は好きです。少しばかり自慢めいた話になりますが、大学入試(当時は共通一次試験)の日本史で満点をとりました。ただ、実態は年号や出来事を詰め込んだだけの暗記。その時代に生きた人々の価値観や時代背景に思いを巡らせることはなく、歴史を表面だけなぞっていたに過ぎませんでした。
社会人になってからも、司馬遼太郎の歴史小説、NHKの大河ドラマや「その時歴史が動いた」といった歴史番組を楽しむ程度で、あくまでも娯楽としての歴史。しかも、興味は日本史に偏り、世界史には目を向けませんでした。
しかし、この仕事を始めてから、見る世界が少しずつ変わってきました。特集記事を書くたびに、その食材の歴史を調べるようになったのです。今では当たり前になったこの習慣の原点は、2018年に「お茶」を取り上げたときにあります。
お茶は東洋の飲み物だと思い込んでいた僕にとって、「世界を征服した飲み物」としてイギリスで語られていた事実は軽い衝撃でした。同時に、自分がいかに狭い視野で食を見ていたのかを思い知らされ、少し恥ずかしくもなりました。
それ以来、できる限り歴史的な経緯を記述するようにしています。近年では、2025年1月の「さつまいも」、2023年11月の「醤油」、そして直近2026年4月の「トマト」。いずれも、その伝来と広がりの背景にある人の営みや時代の流れに目を向けて書いています。
なかでも大きな転機となったのは、読者でもある江角和沙さんと一緒に配信していたポッドキャスト番組「胃的好奇心」で、「砂糖の歴史」を3回にわたって扱ったことでした。4冊の本を読み込み、台本を起こし、「誰かに伝える」前提で歴史と向き合ったのは、このときが初めてでした。
そこで見えてきたのは、砂糖という1つの食材の物語にとどまりません。18世紀の資本主義の成立や産業革命と深く結びつき、さらには私たちの働き方の原型にまで連なっているという事実でした。200年以上前に生まれた「時間に追われる生き方」が、今もなお続いている。その気づきを砂糖の歴史から得た時、歴史が急に、現在の自分と地続きのものとして立ち上がってきたのです。
(詳細に興味ある方はこちらからお聴きください)

「歴史を学ぶ」ことで「歴史から学ぶ」。この循環が芽生えると、僕たちの今が、より解像度高く見えてくるのではないでしょうか。ただ、歴史という言葉は広く、どこかつかみどころがありません。だから僕は「食」を軸にすることを選びました。4月から始めた「食と歴史の読書会」。既に20名を超える人が集っています。どんな気づきが交わるのか、実に楽しみです。





